モーリス・ユトリロ（Maurice Utrillo, 1883 – 1955年）は、パリ生まれの近代フランス画家。
エコール・ド・パリの画家のひとりで、ユトリロとマリー・ローランサンは数少ない純粋なフランス人であった。

モンマルトルの丘を活動拠点とし、一貫して詩情あふれるパリの街並みを描き続けた。
代表作の、酒場ラパン・アジルやサクレ・クール寺院、サン＝ピエール教会などは何度も描かれている。
ユトリロの最盛期である「白の時代」の作品は、とくに不思議な詩情と静謐さに満ち評価が高い。
多彩な白の変化と触感の微妙な表現に成功し、最も多くの傑作を残した時代である。

【作風の変遷】
作品は時代によって大きく分類できる。
1904-07年 モンマニーの時代、1908-14年「白の時代」、1913年以降は「色彩の時代」である。
モンマニー時代には印象派の影響がみえるが、「白の時代」にはユトリロらしい詩情的な絵画様式を確立する。
白い建築の表現に没頭し、家のむき出しの壁面、人気のない小径や教会など、陰鬱な情景を詩的に描き出した。
年代を経た壁や石畳を表現するために、ユトリロは絵具に漆喰や石灰混ぜ、微妙な質感を表現している。

【生い立ち】
母・シュザンヌ・ヴァラドンは画家であった。
また、ルノワールやドガなどの絵のモデルも務めるなど、モデルとしても活動していた。
ヴァラドンの私生児として生まれたユトリロは、7歳の時にスペイン人の画家・美術評論家ミゲル・ウトリリョに認知され、「モーリス・ユトリロ」と改姓する。
体が弱く情緒不安定な幼少期を過ごすと、少年時代にはアルコール依存症となってしまう。
医師が治療のためにすすめたのが絵を描くことであった。
この頃に制作した最初の風景画がきっかけとなり、画家への道を歩み始める。
母の助言もあったが、基本的には独学で描き、初期には印象派独特の点描で描いていたこともある。

略歴
1883年　パリ・モンマルトルのポトー街8番地に生まれる
1909年　サロン・ドートンヌに出品する
1919年　パリ・ルプートル画廊でユトリロの重要な作品の展覧会が開催される
1928年　レジョン・ドヌール勲章を投与される
1955年　71歳で逝去