井上有一（いのうえ ゆういち、1916~1985年）は、日本の書家。戦後の日本現代美術を代表するひとり。

現在の東京都台東区出身。
1935年、青山師範学校（現在の東京学芸大学）を卒業する。
1941年に上田桑鳩の弟子となって絵画から書道へと転向する。
戦後、現代書芸術を確立すべくは奎星会を脱退し「墨人会」を結成。
森田子龍・江口草玄・中村木子・関谷義道とともに前衛的な書道を目指した。
国内外に作品を発表し、1957年『愚徹』をブラジル、サンパウロ・ビエンナーレに出展。イギリスの美術評論家ハーバード・リードに絶賛されたことから一躍海外で知られるようになった。

作風は、1950年代の抽象表現主義と呼応した抽象書「作品」シリーズをかわきりに、60年代にはボンドや凍らせた墨など、素材と描法に工夫を凝らした作品を制作する。70年代は思想と生き様が一致した《貧》などを発表し、晩年に向かい豊かな世界を形成していく。

1975年、神奈川県アトリエを寒川町に移し、翌年定年で校長職を退くまで、教育者と創作活動を両立し続けた。